アリアの覚書

Twitterに投げるには長いことを書きます

問題集『道』における問題流用について

先日、河野翔雲さんのTwitter@taotao0615)において、氏の問題集『道』にて他人の問題の流用があったことが公表されました。このことについて、流用された問題の作成者(の一部)である井口と寺内からも経緯を説明させていただきます。

2019年12月31日、寺内がTQCのメンバーと『道』を使ってフリバをしていたところ、夏合宿で行った井口・寺内共同企画と前フリまで一致している問題がいくつもあることに気づきました。実際に確認すると一字一句同じ問題がペーパークイズ(全60問)から32問抜き出されていることが分かったほか、企画者側のミスで事実と異なっている問題もそのまま流用されており、裏取りすらしていない状態で売り出されたものである可能性が浮上しました。すぐに共同企画者の井口に連絡し、以下の対応をすることにしました。
①我々の企画から問題を流用したことを認め、謝罪してもらう
Twitterでこの事実を自ら公表してもらう
③問題集を購入した方にPDFの削除を求め、付属の編集可能なエクセルファイルについては我々の企画から流用した問題のみ差し替えてもらう
河野さんに連絡したところ「メモから作問したためこのような酷似した問題文になった」とのことでしたが、とりあえず対応していただくことはできました。

しかしその後、同じ夏合宿で行われた藪田企画のペーパー(ビジュアル問題を除いて全25問)にも、8問酷似した問題があることが判明しました。
最初の段階で「同じメモから作ったもので似たような状況になっている問題がないか確認していただいて、もしあれば同様に削除していただきたい」と伝えていたにもかかわらず、その時点で藪田企画から流用したと思われる問題はExcelファイルに残ったままでした。この状況を考えると、河野さんが誠実に対応していたとは考えにくく、我々の方から説明する必要があると考えました。このことをLINEで河野さんにお伝えし、改めて説明を求めました。
それに対して、現在改めて問題を確認し削除を行っているところであり、以下のURL先のツイートで説明をしたとの返答をいただきました。
https://twitter.com/taotao0615/status/1212370654609068038?s=21
ツイートの内容から、メモ起こしではなく流用であったことが明らかになったと思われたのでその点を確認し、肯定の返答をいただきました。流用元についてはっきりさせるため説明をお願いし、以下のURL先のツイートとおおむね同内容の説明を受けました。
https://twitter.com/taotao0615/status/1212391382960103424?s=21
その後、我々からは問題集の取り下げをすすめ、河野さんがそうされたことでひとまず事態は収束したというように考えています。以上が大体の経緯です。

今回問題だった点は大きく分けて
◯我々だけでなく、他の人の問題を流用しているという可能性が本人も否定できないこと
◯流用によって他人に不利益を与える恐れがあった(実際に与えた)こと
の2点だと考えています。個人的な範囲で他人の問題をどう扱うかは自由ですが、それを自分の問題かのように公表することは許されない行為です。皆様も他人の問題の扱いには十分お気をつけください。

流用の対象となった井口・寺内企画は、問題集にまとめることを計画しているものです。河野さんの方からもTwitterで言及がありましたが、PDF・Excelファイルについては削除していただくよう我々からもお願いいたします。

同じようなことが今後起こらないよう願っております。

2020年1月2日 寺内一記 井口凜人

会話劇:今日の夢

「今日の夢のことなんだが」
「へえ、今日かい。9時だけど、ずいぶん早く昼寝でも」
「いや、そうじゃなくて——そうか、俺らが話せる一番新しいのは昨日の夢ってわけか」
「今日が今日だからね、残念ながら」
「やられたな。それでだ、その夢っていうのがやけに奇妙なことが次々と起こる夢でね。ツイートにまとめようとしたら140字ぎりぎりになってしまう」
「なるほど。朝からそんな奇妙なものを投げつけられたら、きみの1600人のフォロワーが黙っちゃいないだろうね」
「そう、いや——俺のフォロワーは俺の話なんか一個も聞いちゃいない。でもともかく、きみに聞いてほしいんだ」
「いいとも、聞こうじゃないか。きみは常人の及ばざる発想を持っているから、面白くないこともなかろう」
「よし、じゃあ話そう……それはこう始まった。俺は英検0級に合格して——これはかねてよりの希望だったんだが——謎の男に連行されるんだ」
「もう一回聞いてもいいかな?」
「悲願の英検0級合格を成し遂げた俺は、謎の男に連行される」
「希望を聞こう。どこから突っ込んでほしい?」
「ボケだったらもっと上手くやるさ」
「ふん……ともかく続きを教えてもらいたいね」
「連れてこられたのは——広々とした部屋で、何かのイベントをやるらしい。机の上には調理器具があった」
「中規模なクイズ大会みたいな部屋か」
「……クイズ大会!」
「どうしたんだい」
「いや、何でもない。そのイベントというのがだ、人肉を食べて出場者の舌をためすものなんだ。人肉を食べるのを拒否したり、負けたりしたら、あるいはそうでなくても無作為に、出場者は別室に連れて行かれて、無言になって帰ってくる」
「へえ、そいつは奇妙だね。“狂気の人肉利き舌トーナメント”ってわけだ」
「そうなんだ、言い得て妙だな。どこかで聞いたことがある気がするよ」
アナクロニズムさ」
「それで——どこまで話したっけな、出場者はランダムで生きながら料理にされてしまうわけだけれど」
「ランダムで、生きながら、ね」
「もうだめだ、こんなところにはもう1秒もいられない、と思って、命からがら逃げ出したんだ」
「へえ、監視も厳しいだろうに」
「トイレには自由に行けたんだ——忘れてるかもしれないが、これは夢だからね」
「みんなただのテクストだと思ってるだろうよ」
「はは、まあねーーそれで逃げて逃げて、追っ手の恐怖に怯える中たどり着いたのが——」
「——クイズ大会ってわけだ」
「どうしてわかるんだ?」
「当たり前さ。何回読んだと思ってるんだい」
「読んだって? ——まあいい。ともかくそのクイズ大会で、高校の恩師に再会するのだった…というわけ。これで全部だよ」
「原作に忠実な3点リーダだね」
「うん?」
「いや、気にしないでくれ、こっちの話だ。それにしても色々な可能性を持った夢だったと思うね。同語反復によって豊かになる、と言い換えてもいいかもしれない」
「そうかい? それは思ってもみなかったね。今年が終わるころには、誰も、俺さえも、覚えていないようなものだけれど」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」
「変わった言い方だな——しかし、すっかり長話になってしまったな、悪かった」
「いいや、問題ないよ。きみの名前のようにね」

23の問題

1.「いい問題」を定義することができるだろうか?

2.「誰にでも作れる問題」はいい問題たりえるだろうか?

3.「自分にしか作れない問題」はいい問題たりえるだろうか?

4.作問は創作行為だろうか?

5.クイズを言語芸術の場とすることと、試験問題を言語芸術の場とすることに何の違いがあるだろうか?

6.「切り取られるべき事実」はあらかじめ存在しているだろうか?

7.「切り取られる言説」があらかじめ存在していないことがあるだろうか?

8.世界のすべてはいずれ既出になるだろうか?

9.クイズの対象はすべてあらかじめ既出であるのではないだろうか?

10.クイズにすることが不可能な対象はあるか、あるならそれは何か?

11.作問における倫理とは何か?

12.クイズに「確定点」があるという言説は妥当だろうか?

13.クイズが言語を介さないことは可能だろうか?

14.「早押し」というフォーマットはクイズにどのような影響をこれまで与えてきたか、そしてこれから与えるだろうか?

15.「答えたい」という衝動はなぜ生じるのか?

16.知識の多寡とクイズの強さにはどのような関係があるか?

17.リテラシーとクイズの強さにはどのような関係があるか?

18.理解と解答可能性にはどのような関係があるか?

19.クイズはコミュニケーションだろうか?

20.「クイズをする」ことによって強いられることとは何か?

21.「難問(≠学生系)の競技クイズ」は成立可能か?

22.「メタ読みのないクイズ」は成立可能か?

23.クイズにはどんな未来があるだろうか?

ニューアーク方式

***

 

「ねえ、どきどきしない?」
「なんで?」僕はたじろぐ。図書室には人気がなく、いるのは彼女と僕だけだ。
「本を借りるときにさ、こうやって名前を書いてもらうでしょ」
彼女は図書委員で、僕は本をよく借りる。彼女はブックカードにさらさらと僕の名前を記入していく。彼女の長い髪が本の端にかかっている。
「人の名前を自分に書かれるのってさ」ようやく主語がはっきりする。彼女はいつもこういう喋り方をする。曖昧で、思わせぶりな。
「それがブックカードの一番あたまだったら」僕は話す。「あるいは一種の喜びを感じるかもしれない。自分がこの図書室で最初にこの本を手に取ったことになるからさ」
僕は嘘をついている。2ヶ月前、『金閣寺』を手に取ったとき、ブックカードに彼女の名前があるのを見て、僕はよほど変な気分になったものだ。でも黙っている。
「そうかー、でも」彼女は首をかしげる。大きな目が傾いて、こちらを見る。「そうじゃなくて、他の人に名前を書いてもらうってこと。今みたいに」そう言って、彼女は僕の名前の最後の一字を書き、スタンプを押した。綺麗に払われた最後の一画に目が留まる。彼女は図書委員で、色々な人の名前を書いてきたのだ。
「それは」僕はためらう。「多分、書くのが誰かによる」
それが何を意味するのか、僕はわからない。耳の奥に血液が流れているのを感じる。それが何を意味するのかも、僕にはわからない。
「へーえ」語尾を変に伸ばして、彼女はにっこりする。
彼女は僕の知らないことを知っていて、僕にはそれがわからない。
「勉強したまえ、少年」彼女はそう言って、僕が借りようとしている『嵐が丘』を差し出す。
「同学年でしょ」僕はため息をつく。「じゃあね」
「また明日」彼女が言う。

 

***

注:この作品はフィクションです。

ノーベル文学賞受賞予想 使用問題

1.ヨーロッパ周遊から帰国するとソモサ打倒の運動に参加し、1979年に成立したサンディニスタ政権では文科相をつとめるなど政治にも積極的に関わった、ソレンチナーメ群島での宗教的共同体建設の試みで知られるニカラグアの詩人は誰?[1925]

2.1995年の『緩やかさ』以降は執筆言語をフランス語とし、最近でも2014年に『無意味の祝祭』を発表するなど活動を続ける、1984年に著した代表作『存在の耐えられない軽さ』で知られるチェコの作家は誰?[1925]

3.11世紀の盲目の詩人マアーリとアルチュール・ランボーの影響のもと、アラビア詩の伝統に囚われない清新な作風の詩を書いてきた、本名をアリー・アフメド・サイード・アスバールというシリアの詩人は誰?[1930]

4.代表作の一つ『血と暴力の国』は『ノーカントリー』として映画化されており、また『悪の法則』といった作品では映画脚本も手がけている、『すべての美しい馬』に始まる「国境三部作」や『ザ・ロード』といった作品を著しているアメリカの小説家は誰?[1933]

5.1993年の『異境』(原題:Remembering Babylon)はフェミナ賞など色々受賞して日本語訳もされた、『An Imaginary Life』『Johnno』といった作品で知られるオーストラリアの小説家・詩人は誰?[1934]

6.『死者の軍隊の将軍』がフランス語訳されると国際的評価を得た、『誰がドルンチナを連れ戻したか』『夢宮殿』などを代表作とし、2005年には第1回国際ブッカー賞を受賞したアルバニア出身の作家は誰?[1936]

7.1970年代後半から農村での民衆演劇運動を指導し、これが反体制的であるとして一時拘禁された、英語で著した小説『泣くな、わが子よ』や、キクユ語で著した戯曲『したい時に結婚するわ』などの作品で知られるケニアの作家は誰?[1938]

8.ユーゴスラビアからの移住者であり、Ivan V. Lalićなどの東欧の詩人たちの作品を多く英訳している、『コーネルの箱』『世界は終わらない』などの作品で知られるアメリカの詩人は誰?[1938]

9.今年(2019年)のエルサレム賞を受賞。「名前に文豪が2人も入っている」と冗談まじりに紹介されることもある、『オン・ボクシング』や、ジェフリー・ダーマーを題材にした『生ける屍』といった作品で知られるアメリカの小説家は誰?[1938]

10.はじめは研究者として出発し、大学でドイツ文学を講じる傍ら『オーストリア文学とハプスブルク神話』などの著書をものした、『もうひとつの海』『ドナウ』といった小説で知られるイタリアの作家は誰?[1939]

11.フェミニズム等に立脚した批評活動でも知られ、カナダ文学の鍵を「サバイバル」にみた評論集『サバイバル』は重要である、『昏き目の暗殺者』『またの名をグレイス』『侍女の物語』といった作品で知られるカナダの作家は誰?[1939]

12.娘のパウラを失った体験をもとにしたノンフィクション『パウラ、水泡なすもろき命』を1994年に発表したのちしばらく執筆活動を中止したが、最近でも2018年に『日本人の恋びと』を著すなど精力的な活動を続ける、『ゾロ』『精霊たちの家』などの小説で知られ、某有名大統領とも血縁があるチリの作家は誰?[1942]

13.自らのユダヤ系という出自に取り組んだファミリー・ストーリー『ある一族の物語の終わり』がおそらく唯一の日本語訳となっている、冷戦期は当局に睨まれつつ、『回想の書』で国際的評価を確立したハンガリーの作家は誰?[1942]

14.ヴィム・ヴェンダースとのタッグでも知られ、自身の作品の映画化や『ベルリン・天使の詩』では脚本をつとめている、『幸せではないが、もういい』や、初期の代表作『不安:ペナルティキックを受けるゴールキーパーの』『観客罵倒』で知られるオーストリアの作家は誰?[1942]

15.2001年、『クコツキイの症例』によってロシア・ブッカー賞を女性として初めて受賞した、2004年の『心を込めて、あなたのリューリク』以降「もう長編は書かない」と宣言したが、『ソーネチカ』『メディアとその子供たち』といった初期長編の評価は高いロシアの作家は誰?[1943]

16.1974年から81年までポール・オースターと結婚していたこともある、『ほとんど記憶のない女』『話の終わり』『サミュエル・ジョンソンが怒っている』『分解する』などのユニークな小説で知られるアメリカの作家は誰?[1947]

17.作詞家としての出自や作品の世界的なヒットから「文学のポップスター」と称されることもある、『ベロニカは死ぬことにした』『星の巡礼』『アルケミスト』といった小説で知られるブラジルの作家は誰?[1947]

18.1990年代に著した『ヴァーチャル・ライト』『あいどる』『フューチャーマチック』の「橋」三部作など、多くの作品で日本を舞台に設定している、ブルース・スターリングとの共作『ディファレンス・エンジン』や、『ニューロマンサー』に始まる「電脳三部作」で知られるアメリカのSF作家は誰?[1948]

19.ジョン・ヴァーリイやマイクル・ビショップとともにレイバー・デイ・グループの一員に数えられる、『星の光、今は遠く』や、『ゲーム・オブ・スローンズ』としてドラマ化された『氷と炎の歌』シリーズで知られるアメリカのSF/ファンタジー作家は誰?[1948]

20.カルロス・フエンテスの作品の中で「ノーベル賞をとる最初のアルゼンチン人だ」と登場人物に評されている、「マオとレーニン」「試練」などが収められた『文学会議』や、『わたしの物語』といった作品が邦訳されているアルゼンチンの作家は誰?[1949]

21.評論『Eros the Bittersweet』も評価が高い、サッフォーなどのギリシャ文学に影響を受けた詩風で知られ、今年(2019年)のナイサーオッズではトップに選ばれているカナダの詩人は誰?[1950]

22.スターンの『トリストラム・シャンディ』のスペイン語訳も評価が高い、ウェイン・ワン監督の映画の原作となった『女が眠る時』や、『白い心臓』『執着』といった小説で知られるスペインの小説家は誰?[1951]

23.石牟礼道子、バオ・ニンとともにアジアの作家として『池澤夏樹=個人編集 世界文学全集』に作品が収められている、その収録作である『暗夜』や、『黄泥街』といった作品で知られる中国の作家は誰?[1953]

24.邦訳は早稲田みかによる『北は山、南は湖、西は道、東は川』がおそらく唯一である、同郷の映画監督タル・ベーラによって映画化された『ニーチェの馬』『サタンタンゴ』といった作品で知られるハンガリーの作家は誰?[1954]

25.「ブルージーンズ世代」の旗手として活躍しており、『ルーマニアポストモダン』といった評論も著している、叙事詩『レヴァント』や短編集『ぼくらが女性を愛する理由』で知られるルーマニアの作家は誰?[1956]

26.代表作の一つ『スザンナ』ではイプセンの妻を題材にしており、「ヘンリク・イプセンの再来」との評価も受けている、『眠れ、よい子よ』『ある夏の一日』『だれか、来る』といった戯曲で知られるノルウェーの劇作家は誰?[1959]

27.1982年以降ドイツでの暮らしを続け、執筆活動もドイツ語と日本語の両方で高い評価を受ける、英訳が全米図書賞を受賞した『献灯使』や、『雪の練習生』『地球にちりばめられて』といった作品で知られる作家は誰?[1960]

28.『中国では書けない中国の話』『ほんとうの中国の話をしよう』といったエッセイは中国で発禁処分を受けているが海外での評価は高い、『兄弟』『血を売る男』『活きる』といった小説で知られる中国の作家は誰?[1960]

29.これまでに『プラヴィェクとその他の時代』『昼の家、夜の家』でニケ賞の候補となっており、同賞および昨年(2018年)のブッカー国際賞を『逃亡派』で受賞したポーランドの作家は誰?[1962]

30.ソウル芸術大学の文芸創作科で教授をつとめる、最近翻訳された『すべての、白いものたちの』や、日本で「新しい韓国文学シリーズ」の第1作として刊行された『菜食主義者』などの小説で知られる韓国の作家は誰?[1970]

 

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1.エルネスト・カルデナル
2.ミラン・クンデラ
3.アドニス
4.コーマック・マッカーシー
5.デイヴィッド・マルーフ
6.イスマイル・カダレ
7.グギ・ワ・ジオンゴ
8.チャールズ・シミック
9.ジョイス・キャロル・オーツ
10.クラウディオ・マグリス
11.マーガレット・アトウッド
12.イサベル・アジェンデ
13.ナーダシュ・ペーテル
14.ペーター・ハントケ
15.リュドミラ・ウリツカヤ
16.リディア・デイヴィス
17.パウロ・コエーリョ
18.ウィリアム・ギブスン
19.ジョージ・R・R・マーティン
20.セサル・アイラ
21.アン・カーソン
22.ハビエル・マリアス
23.残雪(ざん・せつ)
24.クラスナホルカイ・ラースロー
25.ミルチャ・カルタレス
26.ヨン・フォッセ
27.多和田葉子
28.余華(ユイ・ホア)
29.オルガ・トカルチュク
30.韓江(ハン・ガン)

 

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名前と『存在の〜』は知られていそうなクンデラは語り口がとても面白い。イスマイル・カダレ、ミルチャ・カルタレスク、多和田葉子とかは専門に近く、ウィリアム・ギブスンは願望。ジョージ・R・R・マーティンはある書評サイトでオッズに載っていてこれはと思ったので今後数年に期待が持てるかも。チャールズ・シミック柴田元幸御大の授業に出てきたので驚き。アン・カーソンはそんなに一般読者向けでもないみたいだが果たして。トマス・ピンチョンとかは別に入れなかったけどどうなんでしょう(ついでに入れなかった人の話をすると高銀とかはどういう扱いになるのだろう。逆にアディーチェとかは若いけれどどうか)。ハン・ガンももうすぐ50ですってね。
それにしても全然関係ない話をすると翻訳を読むのも楽しいもので、やはり翻訳者にも個性はあるわけです。良い文学とはこうだみたいなことを言う人も最近は少ないですが良い翻訳とはこうだみたいなことをナイーブに言ってしまう人は今でもいますよね。リディア・デイヴィスニコルソン・ベイカーに出会わせてくれた岸本佐知子さんは素晴らしい方です。

クイズにおける本質主義(あるいは)

本質面主義。

まずは何にせよ実作から話を始めたいと思います。

Q. ⽣物地理学において、共通する⽣物種が多いインド洋と太平洋を中⼼とした暖流域のことを何という?
A. インド太平洋
『Catalina』585

 さて、「インド太平洋」は英語のIndo-Pacificの訳語であり、最近では地政学用語として耳にすることも多いものの、Google Scholarなどで少々検索していただければわかるように一般的に使われる生物地理学(biogeography)の用語です。この問題の出典は日本生態学会編『生態学入門 第二版』(東京化学同人、2012)であり、説明としては奇を衒わず、また過剰に解答にある言葉を避ける意図もありません(「死の帳面みんはや」(加瀨 et al., 2019)などを参照のこと)。

それでまあ、クイズとしては全然面白くありません。

この問題は、もともと2018年8月19日に行われた2017年度入学東西インカレ交流戦での山上と井口の共同企画「クイズ!夏祭り」で出題されたものです。同企画で出題された特徴的な問題としては以下のものが挙げられるでしょう。

Q. 今年(2018年)3月に開催されたabc the16thの四択ペーパー第5番「バカリズム」の誤答選択肢にあった3つの言葉とは、「アホリズム」「ドジリズム」と何?
A. マヌケリズム

 要するにギャグです。要するにギャグなのですが、この一見してただつまらない「インド太平洋」の問題がギャグたりえるというのはどういうことでしょうか。明らかに、この問題はその有様によって何かをカリカチュアライズしていると考えられます。何をそうしているかといえば本質(面)主義に他なりません。

別に本質主義的なものが嫌いなわけでは全然なくむしろ好きです。ただどんなものでも馬鹿にしようと思えばできるものです。本質主義的な問題によくある特徴は、取り上げようとする解答の単語自体に付随する面白さが僅少であること、またそれゆえに問題文が当然じみたものになってしまうことです。例えば。

Q. LNGタンクを作る際に行われる、タンクの底で組み立てた蓋を空気圧によって浮上させ、溶接することで屋根を作る工法のことを何という?
A. エアレイジング
(2019年5月4日TQC例会の池内・井口企画「令和元年のフットボール」より)

Q. 2つの核保有国が互いに相手に壊滅的な損害を与えられる戦力を保持することで「恐怖の均衡」が生じるとする、核戦略構想の一種は何?
A. 相互確証破壊
TQC-Mutius交流戦2019より)

 エアレイジングは割と真面目に作った方の問題ですが、実際上そのまんまじゃんという感想は免れ得ません。惜しむらくはそれが専門外に普及していないことで、それに対して相互確証破壊は人々の口にのぼることが多いだけ評価がなされるということになります。

ともあれ、問題文が答えに対してあまりに直接に接続してしまうというのは避けられたい事態であって、果たして固有名詞は隆盛することとなります。そして固有名詞が選ばれるだけ非本質的な気分も高まり、かくて揺り戻しは起こるということになります。ひどく馬鹿馬鹿しい。とはいえ、そもそも問題文と答えの接続がかなり容易であるということは欠点であるばかりではありません。利点がまあ2つ考えられます。つまり、1)ぴんとくる、ということ、そして2)「理解」と「解答可能性」がシームレスに結合することです。

1つめはつまり当初の言い回し系統の出題で意図されていたと考えられるものであり、問題文を聞き、頭を回転させ、早くにぴんと来た人が偉い、といったような様態のものです。わたしが本質主義的な問題を好む所以でもあります(『Catalina』のコラム「速さと遅さ(指編)」「柔らか言葉をめぐる諸問題」も参照のこと)。2つめは、「この問題文xがさす解答Xはこの概念/言葉である」という理解の瞬間と、「解答Xの表現は言葉X'である」という解答の準備が完了する瞬間が一致するということです。固有名詞の場合、例えば前フリ「笑顔が素敵」を聞いて「(どうせ)この前海外メジャーで勝った女子ゴルフ選手だ」というところにいたり、「その人の名前は渋野日向子だ」というように解答が準備されるわけですが(あるいは「笑顔が素敵な人は渋野日向子だ」とあらかじめしておくことによってステップを縮めることができます)、いずれにせよ、解答にたどりつくのに問題文からの跳躍を必要とします。しかし解答が上記の特徴2に従う場合はそうではありません。

前者の特徴は「わかっている人が早く押せる」、後者の特徴は「わかっている人が正解できる」という本質主義が目指すものにリンクしており、それゆえ前半部で述べた特徴は払うべき苦い代償であると捉えることもできます。

そこで結局問題は、どうして「わかっている人が早く押せ」て、「わかっている人が正解できる」問題を出題する必要がある(出題したいと思う、出題することが面白いと思う)のか、ということに繋がりますが、それではまた長くなってしまうのでとりあえずここまで。

跋:例に挙げている問題はすべて自分のものですが、このことには無用なトラブルを避けるというのと、この文章がそもそも自己反省を伴ったものであるという2つの理由があります。人の問題を云々できるくらいの強い批評態度を身に付けたいものです。