アリアの覚書

Twitterに投げるには長いことを書きます

会話劇:今日の夢

「今日の夢のことなんだが」
「へえ、今日かい。9時だけど、ずいぶん早く昼寝でも」
「いや、そうじゃなくて——そうか、俺らが話せる一番新しいのは昨日の夢ってわけか」
「今日が今日だからね、残念ながら」
「やられたな。それでだ、その夢っていうのがやけに奇妙なことが次々と起こる夢でね。ツイートにまとめようとしたら140字ぎりぎりになってしまう」
「なるほど。朝からそんな奇妙なものを投げつけられたら、きみの1600人のフォロワーが黙っちゃいないだろうね」
「そう、いや——俺のフォロワーは俺の話なんか一個も聞いちゃいない。でもともかく、きみに聞いてほしいんだ」
「いいとも、聞こうじゃないか。きみは常人の及ばざる発想を持っているから、面白くないこともなかろう」
「よし、じゃあ話そう……それはこう始まった。俺は英検0級に合格して——これはかねてよりの希望だったんだが——謎の男に連行されるんだ」
「もう一回聞いてもいいかな?」
「悲願の英検0級合格を成し遂げた俺は、謎の男に連行される」
「希望を聞こう。どこから突っ込んでほしい?」
「ボケだったらもっと上手くやるさ」
「ふん……ともかく続きを教えてもらいたいね」
「連れてこられたのは——広々とした部屋で、何かのイベントをやるらしい。机の上には調理器具があった」
「中規模なクイズ大会みたいな部屋か」
「……クイズ大会!」
「どうしたんだい」
「いや、何でもない。そのイベントというのがだ、人肉を食べて出場者の舌をためすものなんだ。人肉を食べるのを拒否したり、負けたりしたら、あるいはそうでなくても無作為に、出場者は別室に連れて行かれて、無言になって帰ってくる」
「へえ、そいつは奇妙だね。“狂気の人肉利き舌トーナメント”ってわけだ」
「そうなんだ、言い得て妙だな。どこかで聞いたことがある気がするよ」
アナクロニズムさ」
「それで——どこまで話したっけな、出場者はランダムで生きながら料理にされてしまうわけだけれど」
「ランダムで、生きながら、ね」
「もうだめだ、こんなところにはもう1秒もいられない、と思って、命からがら逃げ出したんだ」
「へえ、監視も厳しいだろうに」
「トイレには自由に行けたんだ——忘れてるかもしれないが、これは夢だからね」
「みんなただのテクストだと思ってるだろうよ」
「はは、まあねーーそれで逃げて逃げて、追っ手の恐怖に怯える中たどり着いたのが——」
「——クイズ大会ってわけだ」
「どうしてわかるんだ?」
「当たり前さ。何回読んだと思ってるんだい」
「読んだって? ——まあいい。ともかくそのクイズ大会で、高校の恩師に再会するのだった…というわけ。これで全部だよ」
「原作に忠実な3点リーダだね」
「うん?」
「いや、気にしないでくれ、こっちの話だ。それにしても色々な可能性を持った夢だったと思うね。同語反復によって豊かになる、と言い換えてもいいかもしれない」
「そうかい? それは思ってもみなかったね。今年が終わるころには、誰も、俺さえも、覚えていないようなものだけれど」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」
「変わった言い方だな——しかし、すっかり長話になってしまったな、悪かった」
「いいや、問題ないよ。きみの名前のようにね」